ずっと行きたかった小豆島。
きっかけは、数年前に見た映画『二十四の瞳』。広大な空と穏やかな海、そして島人たちの優しい眼差しが、私の心に深く残っていました。それ以来、「いつかあの島でゆっくり暮らしてみたい」と思っていたのです。

今年の春、ついにその夢を叶えることにしました。東京から新幹線で岡山へ、そこからマリンライナーで高松へ。高松港からフェリーに乗ること約1時間。船が近づくにつれ、青い海に浮かぶ緑の島が見えてきました。まるで絵葉書の中の風景です。
小豆島は、日本で初めてオリーブが栽培された地として知られています。港を降りると、まず目に入るのが「オリーブ公園」の看板。でも、私はあえて観光スポットを避けて、レンタサイクルで島の奥へ向かいました。
宿は土庄町から少し離れた「草壁港」近くにあるゲストハウス「海風舎」。オーナーの健太さんは元都内でデザイナーをしていたそうですが、「都会のスピードに疲れ果てた」と言って、5年前に移住してきたのだとか。
チェックイン後、まずは自転車で海岸線を走りました。道は細いですが、車も少なく、潮風が頬を撫でていきます。途中、小さな漁港で休憩していると、茶トラの猫が寄ってきました。「ここは“ねこの港”って呼ばれてるんだよ」と、地元のおじいさんが教えてくれました。

小豆島には、人よりも猫が多い地域があるのだそうです。特に草壁や池田港周辺では、猫が家の前に座っていたり、神社の境内で昼寝していたり。彼らは観光客にも慣れていて、撫でるとゴロゴロと喉を鳴らします。
翌日は、島の名所「エンジェルロード」へ。干潮時にだけ現れる砂の道で、恋人同士が手をつないで渡ると願いが叶うと言われています。私はひとりでしたが、それでも歩いてみました。足元はさらさらの砂、遠くに見える小島との間に、青い海がきらめいていました。
午後は、健太さんに連れられて、島のオリーブ農園を訪問。オーナーの佐藤さんは70代。若い頃からオリーブ栽培を続けており、「この木々は、私の子どもみたいなものだ」と話します。収穫期は11月ですが、春は剪定の時期。私も手伝わせてもらい、枝を切る感触、葉の香り、土の匂い——すべてが新鮮でした。
夜はゲストハウスでBBQ。地元のイサキ、オリーブオイルで焼いた野菜、そして島で作られた「醤油ソフトクリーム」(意外と美味しい!)。健太さんと佐藤さん、それに他のゲスト2人と一緒に、火を囲みながら語り合いました。話題は仕事、恋愛、将来の夢……都会では恥ずかしくて言えないような本音が、自然と口からこぼれました。

最終日、朝早く起きて「寒霞渓(かんかけい)」へ。ロープウェイで山頂に登ると、瀬戸内海の島々が一望できます。朝霧が海面に漂い、まるで雲の上にいるよう。その景色を見ていると、「自分は何のために生きているんだろう?」という問いが、ふと頭をよぎりました。でも、答えは急がなくてもいい。ただ、この瞬間を大切にすればいいのだと、思えました。
帰りのフェリーで、スマホのバッテリーが切れていることに気づきました。でも、全然気になりませんでした。むしろ、「もう少しこのまま、島の時間を続けたい」と願う自分がいました。
小豆島は、何もしないことが贅沢な場所です。
海を見て、猫と戯れて、オリーブの木の下で昼寝する——それだけで、心が満たされる。
旅のヒント:小豆島は公共交通が限られているので、レンタサイクル or レンタカーがおすすめ!猫好きは「草壁港」「池田港」を重点的に。オリーブオイルはお土産に最適。


















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